Jazz Word さ行
Jazz Word
【サ】
サイドメン side men
主に小編成のバンドの、リーダーあるいはフィーチャーされた人以外のメンバーを指す。ヴォーカルでは伴奏者。映画一演劇の「脇役」に相当するような、サポートならではの名人芸を披露してくれるミュージシャンも多く存在している。
サビ(ブリッジ) bridge
曲の中盤あたりに出てくる、それまでのメロディ構成とは違った曲想をもった部分のこと。
違うメロディが挿入されたり、コード進行や調が変わったりする。現在のポピュラー音楽は、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、Aメロ、Bメロ、サビ、サビという構造になっていることが多い。英語では「ブリッジ(Bridge)」。
サルサ salsa
キューバの民族音楽をもとにジャズの要素が加えられ、ニューヨークで発展した音楽のジャンル。カリブ海諾島からの移民(ヒスパニック系)が増大した1960~1970年代にかけて流行。ティト・プエンテ(perc)などのスターを輩出した。日本のラテンジャズ(オルケスタ・デ。ラ・ルスやオルケスタ・デル・ソルなど)にも大きな影響を与えている。
サンバ samba
ポルトガル語。ブラジルの民族舞曲を指す。基本的に二拍で、速いテンポで特有のアクセントを表現するのが特徴。
【シ】
シカゴ・スタイル chicago style
1920年代にはいってジャズの中心はニューオリンズからシカゴヘ移った。ビックス・バイダーベック(cor)、ジャック・ティーガーデン(tb)、エディ・コンドン(g)などが活躍した。ベニー・グッドマンもこのシカゴ・スタイルを学んでスウィング時代をつくる糧としている。
シットイン sit in
本来のメンバーではない人が参加して演奏すること。飛び入り演奏。比較的自由参加が認められているジャムセッションと違って、ジャズクラブに出演しているバンドに飛び入りするのはハードルが高い行為だが、ニューヨークなどでは現在もこの習慣が残されている。テクニックやレパートリー、度胸をつけるだけでなく、次に飛躍するためのチャンスをつかむことも可能となる。
ジャズロック jazz rock
1960年代後半から顕著になった、ロックとジャズの融合的なサウンドを志したスタイル。ビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」に代表されるような、当時の複雑化・内面化するロックムーヴメントと、エレクトリックなサウンドを積極的に取り入れようとしたジャズの方向性が合致したことで生まれた。ジャズに16分音符によるリズムをもたらし、それまでのスウィング感やグルーヴ感とは違う表現を可能にした。
シャッフル shuffle
バックのリズムの一種で、3連符ではずむもの。
ジャム jam
1990年代後半から盛り上がりを見せる、ジャズやアンダーグラウンド系音楽のスタイル。もともとはジャズのジャムセッションの気風を踏襲し、ライブのできる場所で実験的な音楽を積み重ねてきた潮流の延長線上にある。1970年代のポスト・フリージャズから発展した「ロフトジャズ」や、1980年代のサンフランシスコ周辺で盛んになった「パンクジャズ」などが原型となり、「クラブジャズ」の発展とともに多くの人材を輩出するようになった。ジャムシーン自体はさらに過激な即興音楽や、カントリー&ウェスタンやブルーグラスのようなアメリカの民謡的な側面をもつものも取り込み、ジャズという枠ではとらえきれないスタイルとなっている。
ジャムセッション jam session
居合わせた演奏家が、簡単な約束事だけを決めて始める即興的な演奏、またはその集まり。ジャムと省略することも多い。即興性の強いビバップが主流となった1940年代後半以降は、演奏者個人のアドリブを中心に展開されるジャムセッションが好まれ、一般化した。現在でも、ライブのイベントなどで複数の出演者がある場合、ステージの最後などに出演者総出となるようなジャムセッションが組まれることも多い。普段は見ることのできない組み合わせや演奏などが楽しめる。
初見
初めて見た楽譜を、その場でそのとおり弾くこと。楽譜の読解力と演奏能力の両方を間われる作業で、スタジオワークなどを職業とする音楽家には必須とされる。ただし近年では、譜面ではなくコンピュータデータなどを参考に演奏をすることも増え、譜面の読解力を問われないケースもあるとか。
シングルトーン single tone
単音。特に、複数の音を一度に出すことのできるギターやピアノなどの楽器で音を重複させずに演奏する場合、「シングルトーンで」と表現されることが多い。
シンコペーション syncopation
切り分け音。強い拍と弱い拍の位置関係を入れ替えることなどによって、音楽のリズムに緊張感を生み出す手法。ジャズ特有の「ノリ」に大きな影響を与える要素。ジャズではコードなどが半拍先取することをアンティシペーションと呼ぷ。これもシンコペーションの一種である。
シンフォニック・ジャズ symphonic jazz
正確にはジャズとはいえないが、1924年2月にポール・ホワイトマンがジョージ・ガーシュイン作曲、ファーディ・グローフェ編曲の「ラプソディ・イン・ブルー」を初演して犬成功をおさめたときから、シンフォニック・ジャズという言葉が使われはじめた。のちにもデューク・エリントン(p)やピート・ルゴロやクラウス・オーガーマンなどによってシンフォニックなジャズが試みられたが、決定的にすぐれたものは出ていないようである。
【ス】
スウィング swing
「揺れる」意が転じて、白然に体が揺れ動き出すようなリズム感のこと。ジャズを定義づける要素のひとつとされる。「スウィングしている」かどうかは、ジャズとして存立できるかどうかの絶対条件ともいわれる。ジャズ史上スウィング期と呼ぱれる時期は1935年~1945年であるが、スウィングという言葉がジャズ界で使われるずっと以前の1900年代のニューオリンズのころから現在にいたるまでジャズの中にはスイング感が生きている。「スウィング期」の特徴を最も良く示しているのはテディ・ウィルソンのピアノであり、「スウィング感」を最も良く示しているのはカウント・ベイシー・オーケストラである。
スウィング・ジャズ swing jazz
主に1930~1940年代に流行した、ビッグバンドの演奏によるジャズのダンス音楽を指す。フォービートによる、白然に体が揺れ動き出すような独特のリズム感をもった表現としても定着し、ジャズを代表するスタイルのひとつとなった。
スキャット scat
ジャズ風の動きの速いメロディーに独特の歌詞のようなものをつけて器楽的にうたう方法。ヴォーカルやコーラスのアドリブのパートに用いられることが多い。ディジー・ガレスピー(tp)はトランペットを吹くかたわらよくスキャット唱法でうたったし、エラ・フィッツジェラルド(vo)、サラ・ヴォーン(vo)、メル・トーメ(vo)などの歌手たちもスキャットの技巧的な歌を時々きかせる。なおスウィングル・シンガーズはこのスキャット唱法を応用してバッハの作品をうたって成功を収めた。
スケール scale
音階。各調ごとの基準音から、オクターブ上までを順番に並べたもの。コードの理解はもちろん、コード進行に準拠したアドリブの展開などに大きな影響が出るため、各調ごとのスケールの把握はジャズでは特に大事な要素とされる。
スコア score
音楽の楽譜。ある楽曲を演奏するために必要なすべてのパートの音符が記されており、それらを一覧できるようにした「総譜」を指すことが多い。
スタジオ・ミュージシャン studio musician
レコード会社の依頼に応じて演奏をする音楽家の総称。レコード業界が大きく発展した1950年代以降に出現。初期のころは、1959年に設立された黒人音楽専門のレーベル、モータウンに所属したジャズ・ミュージシャンたちのように“姿なき存在”だったが、1970年代後半にスタジオ・ミュージシャン出身の音楽家が注目を浴びるようになり、その存在がメジャー化した。なかでも“ファースト・コール”と呼ばれる業界トップの面々は、1980年代以降のジャズやフュージョンを支える重要な役割を担う存在となった。
スタンダード形式 standard form
8小節を1コーラスとして、その4倍である32小節から構成される楽曲。これが一般的となり、スタンダード(標準、基準)と呼ばれるようになった。
スタンダードナンバー standard number
多くの演奏者に取り上げられ、繰り返して演奏されるようになった楽曲。古くはヨーロッパからアメリカに渡って歌い継がれるようになった民謡に始まり、20世紀初頭に発達したミュージカルなどショービジネスで用いられた挿入歌に「スタンダード」と呼ばれるものが多い。特に基準がないため、近年ではビートルズ・ナンバーや1980年代以降のヒット曲が“ニュー(New)”をつけてスタンダードの仲間入りをするケースも出てきている。
ストライド stride
「歩幅」「またぐ」の意。ジャズでは、ラグタイム・ピアノをもとに発展させたテクニックを指す。ピアノ奏者の左手が、一拍ずつ交互にオクターブの音をまたぐようにして鳴らすことから、こう呼ばれるようになった。
ストライド・ピアノ stride piano
1920年代ニューヨークのハーレムではラグタイム直系のすぐれたピアニストたち、ジェームス・P・ジョンソン、ウィリー・ザ・ライオン・スミスなどが活躍していた。彼等の左手のスタイルをストライド・ピアノと呼んでいる。テンス(10度)・バスを多く用いて鍵盤上を往復する様子からこの名称がつけられた。このスタイルのピアニストとしてはファッツ・ウォーラー、デューク・エリントンの名前も忘れることはできない。
ストリングス strings
弦楽器。弦楽器群。弦楽器によるアンサンブル。ジャズでは、ビッグバンドとは違ったゴージャス感を表現できる編成として用いられることが多い。電気楽器による弦楽器のアンサンブルを模した音色を指す場合もある。
ストレートアヘッド straight ahead
「純粋な」という意味が転じて、「フォービート・ジャズの伝統を受け継いだジャズ」を意味するときに用いられる。具体的には1940~1960年代の、ビバップからハードバップと呼ばれるジャズを模範としたスタイルを指す。フュージョンが台頭してジャズが広義にとらえられるようになった1980年代あたりから、“ジャズ原理主義”的な主張でムーヴメントを起こしたウィントン・マルサリス(tp)たちが、フュージョンやコンテンポラリージャズと呼ばれるものとは区別するために使い出したことで広まったと思われる。
スムースジャズ smooth jazz
「smooth=流暢な」という意が転じて、そのような印象を受けるフュージョン系のスタイルを指すようになった。1962年にハーブ・アルパートが設立したA&Mレコードでは、ラテン音楽をアメリカ音楽にうまく配合して次々と大ヒットを飛ばしていた。A&Mレコードが提示した、ジャズとロックやポップスとの融合による聴きやすい音楽(イージーリスニング.ミュージツク)は、やがてAOR(アダルト・オリエンティッド・ロックー=アダルト・コンテンポラリー)へ発展。こうした流れに並行して、黒人音楽側でも軟化策がとられ、これがブラック・コンテンポラリーとなって、お互いが交わるようになっていく。フュージョンが台頭した1970年代後半から1980年代にかけて、こうしたポピュラーシーンの動きがインストゥルメンタルにも影響し、ビート感を抑えたメロディアスなサウンドを生み出すようになっていった。この潮流を1980年代後半あたりからアメリカのFM局などが「スムース」と呼ぶようになり、コンテンポラリージャズのスタイルのひとつとなった。
スラップ slap
ギター(主にべースギター)の奏法。擬音語の「ピシャリ(と打つ)」が転じて、弾き手の親指で弦を叩いたり、人差し指で弦を軽く持ち上げてはじいたりする方法を指す「チョッパー」とも。
【セ】
セッション session
演奏家が集まって演奏することを指したり、演奏行為の単位として用いられる。また、ジャムセッションの略語としても使われる。
【ソ】
ソウルジャズ soul jazz
ブルースや教会音楽の要素を多く取り入れたジャズのスタイル。1960年代ごろにレス・マッキャン(p)やラムゼイ・ルイス(p)らがブルースのフレーズを多く取り入れたプレイで好評を博し、ヒットを飛ばしたことで広く知られるようになった。六五年のビルボード誌のチャートでラムゼイ・ルイスの「ジ・イン・クラウド」は最高5位を記録した。一方でジミー・スミス(org)らハモンド・オルガンを演奏する音楽家を中心にソウルジャズの機運が高まり、1990年代に再評価されるレア・グルーヴの基礎を築くことになった。ちなみに、同じようにブルースや教会音楽の影響を強く受けたジャズに「ファンキージャズ」がある。
ソリ soli
ハーモニーを伴った合奏。ソロの複数形。ビッグバンドなどで、ひとっの楽器パートをフィーチャーした演奏部分を指す。
ソロ solo
独奏。独唱。演奏家が単独で行なう演奏のこと。また、バンド演奏で単独のアドリブ演奏を担当する部分を指す。